身近な交流サイトで犯罪に巻き込まれる子供たち
インターネットの交流サイト(コミュニティサイトともいう)をきっかけとする、児童福祉法違反、青少年保護育成条例違反等の事件は、年々増加しています。
2015年4月の警察庁のまとめでは、これらの事件被害にあった18歳未満の少年・少女が昨年1年間で1,421人に上り、統計が残る2008年以降最悪であったと発表されました。
事件被害の特徴は次の通りです。
前年比128人増の被害者1,421人のうち、少女が1,395人と大半を占め、残念なことに殺人事件に発展してしまった事案もあります。
被害者の過半数が15歳以下で、最年少は9歳。
出会い系サイトに比べ、低年齢層の被害者の割合が多いのが交流サイトの特徴です。
2014年の統計では、携帯電話を使って交流サイトへアクセスしていた被害児童の9割はスマートフォンを利用していました。
今は子供たちがスマートフォンを持つのも珍しくなくなってきています。
近年では、出会い系サイトよりもむしろ交流サイトの方が、子供達が犯罪に巻き込まれる事件が圧倒的に多い状況です。
出会い系サイトと交流サイトは、そもそも何が違うのでしょうか。
かつては、出会い系サイトを通じて子供たちが性犯罪などに巻き込まれる事件が多発し、大きな社会問題になっていました。
そのような背景があり、2009年に法改正がなされ、18歳未満のサイト利用が禁止され、サイト運営者も利用者が18歳未満でないかの本人確認が義務付けられました。
この法改正によって、出会い系サイトを通じて子供が犯罪に巻き込まれる事件は、年々減ってきています。
しかしその一方で、特に本人確認が義務付けられておらず、誰でも簡単に登録することができる交流サイトで、同様の事件が起きるケースが増えてきました。
子供が被害にあうケースとして急増しているのが、無料通話アプリのIDを交換し合い、見知らぬ人と連絡を取り合うケースです。
ネットを通じて知り合った見知らぬ相手でも、アプリのIDであれば、メールアドレスや電話番号などに比べて抵抗なく教えてしまうのです。
さらに、通話アプリには通話機能以外にもチャット機能やスタンプなどの豊富な機能があり、より手軽に連絡を取り合うことができることも、通話アプリIDの交換が増えた理由の1つです。
今は子供でもスマートフォンを持つことは珍しくありません。
しかし、利用に関して何が危険であるか、何をしてはいけないかを教えていなければ、 子供達が犯罪に巻き込まれる確率が高くなってしまいます。
被害にあった生徒の3割は学校から交流サイトの利用についての注意を受けておらず、5割強は保護者から注意を受けていませんでした。
子供たちを信用し、任せることも大切です。
しかし、インターネットを使える環境を与えるのならば、保護者や学校からインターネットや交流サイトの利用についてきちんと注意することが、子供たちを被害から守るためには必要です。
子供たちが被害にあわないためには、何が危険であるかを教える必要があります。
また、保護者もその危険について知っておかなければなりません。
交流サイトなどで公開した個人情報は、「全世界に公開した」ということと同じです。
名前、顔写真や通っている学校、メールアドレスなど、個人情報をむやみに公開しないようにしましょう。
被害児童の3割強は、プロフィールを詐称して登録していました。
子供達がプロフィールを詐称するのと同じように、相手も性別や年齢などを詐称して登録している可能性があります。
メールアドレスや電話番号はもちろん、通話アプリのIDも大切な個人情報です。
見知らぬ人には簡単に教えないようにしましょう。
交流サイトで知り合った人と仲良くなり、住んでいる場所が近ければ実際に会いたいと思うことがあるかもしれません。
しかし、その相手はプロフィールを詐称していたり、何か悪意を持っている可能性もあります。
決して子供だけで会いに行ってはいけません。
昨年の警視庁のアンケート調査で、スマートフォンでのインターネット利用が頻繁な子供ほど、日常生活に満足していない傾向にあり、SNSで見知らぬ相手と知り合うことが「楽しい」と考える割合も多いことがわかりました。
日常生活を満足させるためには、インターネットを通さずに友人と会話したり、家族みんなで会話をしながら食事の時間を過ごすといった基本的なことを大切にしましょう。
交流サイトを使って、いろいろな人とコミュニケーションを図ることは悪いことではありません。
同じ趣味を持った人や全く知らない世界の人と交流し情報を交換することは、良い経験となり可能性を拡げるきっかけにもなります。
しかし、ネット上で知り合う人の中には、悪意を持って近づいてくる人がいるということを決して忘れてはいけません。
インターネット上での情報の扱い方を保護者が子供たちに注意し、以前紹介したフィルタリングやペアレンタルコントロールについても親子できちんと話しあうことが、大切です。